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 何処かへ続く  誰かが待ってる  喜びに満ちたその扉をノックしたい
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 地味に書いてたバドハイ小話。バドーくんが若干ヤンでる&暴力表現あるので苦手な方は無理せず回れ右。




■■■

 最後の一人のアキレス腱を断って銃をホルダーに戻す。ふと、火薬ではない煙の匂いが鼻腔を刺激する。振り返ると少し高い視線とぶつかる。
「そっち終わったー?…ん、何?俺の顔なんかついてる?あんま見つめると惚れちゃうぜ?」
 なんかウィンク付きのドヤ顔で言われた。ウゼぇ。
「…頭沸いてんの?ニコ中君。だいたい禁煙中じゃねぇのかよ、近づくだけで臭ぇんだけど」
「いちいちひっでぇな、ツンデレ君。ちゃんと禁煙してるもんっ!!」
 と、代わりにくわえたキャンディのスティックをしきりに主張する。とはいえ、禁煙を始めると宣言してから約1日。普段はバイトの最中でも数時間と保たない程のニコチン中毒者は最早目に見えて限界のようで行き場の無い手と視線が不自然に泳いでいる。
「んじゃ、ばぁさんへの報告はよろしく。お疲れさん」
「待てコラ。毎度毎度、報告押し付けてとんずらこくなよ!!」
 踵を返したところで襟首を掴まれる。
「いいじゃん、いつものことだし。…目怖ぇよ、なんで今日に限ってそんな必死なの?」
 碧い隻眼の焦点が虚ろに訴えてくる。
「…ウルセーやい。いいから行くぞ」
 結局、手首を掴まれ連行された。

■■■

 報告を終えて地上に出る。相も変わらず辛気臭い街は既に宵闇の中だ。
「おい、大丈夫かよ?つか、いい加減手首放せ」
 力ずくで解くことも可能だが、掴まれてるのはこっちなのに何故か逆に支えるような体勢になっている。
「よす…行くろ!!」
 なんかもう呂律も怪しい。そして、手首はそのままだ。なんだかな…。
「どこに行く気だよ。いーからテメェは大人しく自分んとこ帰れよ」
「らめっ!!今日はおまえんち行くもんね!!」
(…えぇ~)
 正直どころか露骨にメンドイわ。ホント捨てて帰ろうコイツ。

 しつこく掴んでくる手を無理やりほどいて路地のゴミ山に蹴っ飛ばして突っ込ませた。
「………」
 踵を返して大通りのネオンを目指す。多少喧しいが雑踏が程よく盾となり壁となる。
 雑踏に紛れる直前、左の二の腕を掴まれ路地に引き戻される。
「捨てていくなんてヒドいんじゃねぇのハニー?」
 ゾッ…
 一瞬、本気で肌が粟立つ。碧い左目に射るように覗き込まれる。
「…っとに、何してぇんだよオマエは」
「ちゅう。」
 言うや否や胸ぐらを引かれ唇を塞がれる。強引に口腔をまさぐられ、歯列をなぞられる。さっきゴミ山に突っ込ませたせいで微かな腐敗臭が鼻孔を刺激する。溢れた卑猥な水音は路地裏の影をいっそう濃くするようにこだまする。
 壁に押し付けられ、橙色の長い髪が頬に落ちる。染み付いた紫煙の香りはゴミの臭いにも、たった1日の禁煙でも消えることは無い。
「っ…はぁはぁ。息くらいさせろよ」
 鬱陶しい長髪を鷲掴み、執拗な愛撫を引き剥がす。不完全な不死の身とて呼吸を妨げられては体が思うように動かない。
「じゃあ、縛りつけてずーーーっとキスしてたらハイネたん死んじゃう?ヤってみる?」
「バカか。そんなん確実にお前の方が先に死ぬだけだろ」
「そりゃ、そーだ。でもちょっと倒錯的でドキドキしねぇ?」
「ひとりでヤってろ」
「つれねーなぁ…」
 顎を掴まれ強引に頭を傾がされたと思った刹那、痛覚よりも先に脊髄が反射した。…文字通り。
 ひとつ息を吸って我に還ると向かいのゴミ山にバドーが頭から突っ込んでいた。首筋に嫌な感触が残っている。バドーに咬まれた傷は跡形もなく、しかし拭えぬ不快感は簡単に消えてくれない。今度こそ路地裏を後にする。

■■■

「あれ?バドーその傷どしたの?さてはまた何かヘマやらかしたな?」
 満身創痍のままバイトの店番をしてるとミミがからんできた。
「…たぶんな。ハイよ、炭酸水2本とフィルム1ケース」
「『たぶん』て何さ?あ、ありがと」
 その場で炭酸水のボトルを1本開けながら実に楽しそうに追及してくる。
「ここ2・3日の記憶無くて分からん」
 周りから多少の話を聞くに、ゴミ収集の業者が発見して通報したらしい。気が付いたら病気のベッドの上だった。すっかり顔馴染みになってしまった医者とナースには目が覚めたならさっさと帰れと追い返された(ミハイの旦那同様ブラックリストらしい)。
「白髪くんは?何か知ってんじゃない?」
「…それが連絡つかねーんだよなぁ」
「あらま。…うーん、理由分かんないのイジってもつまんないから帰るかー。じゃあね、一応お大事にー」
「一言余計だっつの」
 軽く手を振りながら去っていくミミを見送りながら折れてない方の手でポケットをまさぐる。
「…あれ?ライター無ぇ…」




 さて、バドーにとって喫煙と禁煙どちらが毒でしょうか?

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